「もう1回やるぞー!1・2・3・4!声出せ声ー!」
ほかの生徒に教えるため、応援団にはいち早く応援合戦の振り付けが伝えられる。
「おい!そこの女子!ここはこうだよこう!腕を上に振りあげるんだよ!」
団長の熱血的な声が響き渡る。
「おいお前聞いてんのか!?お前だよお前!」
そう言いながらわたしの目の前にしかめっ面で仁王立ちする団長。
その様子を見てわたしは察した。
「え、わたし??」
「そうだ!お前次はこうだ!」
「こう…?」
「ちがーう!もっと前に重心を…」
団長が声を荒らげる原因はどうやらわたしだったらしい。
「右足を前に出すだろ?左足を後ろに引くだろ?そんでつま先の方に重心を置くんだよ」
「こう…?」
団長の指導に合わせて体制を変え、恐る恐る確認すると団長の顔が一瞬固まった。
「…お前真面目か?」
「真面目ですけど…」
わたしがそう答えると、団長は少し考えてからわたしの隣にいる利世に言った。
「よし。お前同じクラスだろ?教えてこい」
「え、俺?」
面倒くさそうな顔で利世は団長に聞き返す。
「そうだ。外とかどっかで適当にできるだろ。早く行ってこい」
「わかりました」
団長の指示を静かに受け入れた利世は歩き出した。
「行くぞ茉乃」
そう、わたしと共に。