「真悠くん!」



真悠くんのクラスも今終礼が終わったばかりのようで、教室にはまだ1人も欠けずに全員そろっている様子。


突然大声で真悠くんを呼んだわたしにその全員が視線を向けたが、今のわたしにそんなことは関係ない。


と思っているのはわたしだけのようで、真悠くんは少し嫌そうな顔をしている。


その顔を見て瑞季くんが爆笑していることは言うまでもない。


笑ったまま、真悠くんの背中をバシバシ叩いている。行ってこい、ということなのかな。


それを受けてか、真悠くんがわたしのもとへ向かってくる。


ナイスだよ瑞季くん!そのままずっとアシストしていてほしいよ!



「先輩来るの早くないですか」


「えへへ…終礼終わってダッシュで来たもん!」


「そんなに急がなくても…」



え、なに、真悠くん。そんなに急がなくってもなによ!?



「真悠くん、急がなくってもなに?」


「いや、だから」


「待っててくれた!?」



わたしが食い気味にそう聞くと、真悠くんは少しため息をついて言った。



「ダッシュしたせいで髪ボサボサですよ」


「え!?」



カバンは教室に置いてきてしまったので鏡もくしもないわたしは手ぐしで応急処置をする。


そうして気づく。急がなくても待ってあげる、ではなく、そんなに急いだから髪ボサボサなんだよってことか。


待ってくれたわけじゃないってことを知りショックを受ける自分もいるが、むしろ、自分の女子力の低さに全力で引く。


好きな人に会いに来たのに髪ボサボサって、それって女子としてどうなんだ?


仮にダッシュしたとして、そのまんま整えもせずに好きな人に声かけるって、恋する乙女としてどうなんだ?