「先輩」
騒がしかった昼休みの教室が急に静かになったような、そんな気がした。
実際にはみんな友達と話したまんまなんだけど。
でも、それでも、わたしには聞こえた。
だってそれは、わたしの大好きな声だったんだから。
声をした方にパッと振り返ると、教室のドアに少しだけ寄りかかりながらこっちを見ている真悠くんがいた。
なんでだろう、ただこっちを見て立っているだけなのにこんなにかっこいいのは。
1週間ぶりに目が合った真悠くんは相変わらずかっこよくて、胸がきゅっと苦しくなった。
「先輩」
もう一度呼んだ真悠くんはわたしと目が合っているような気もするけれど、"先輩"としか言わないから誰だかわからない。
言ってしまえば、真悠くんからするとここにいる全員が先輩だ。
今ルンルン気分で真悠くんの元に向かってわたしじゃなかったら恥さらしでしかない。
そんなふうに真悠くんと話したい気持ちを必死に抑えていると、真悠くんが痺れを切らし教室へ入ってきた。
その足はどうやらわたしの方に向かっているようにも見えてしまう。
いや、見えてしまってるだけだって!自意識過剰だっつーの!自分!!