──キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、昼休み開始のチャイムが鳴った。
瑞季が先輩にしおり作りのことを伝えに行く昼休みになった。
「瑞季!」
俺は教室を出ようと席から立ち上がった瑞季を呼び止めた。
「んー?」
俺の声に振り向いた瑞季に言った。
「俺が行く。先輩のとこ」
俺の言葉を聞いて少しも驚いた顔もせず瑞季は言った。
「なんだよハルー!茉乃せんぱいに会いたくなっちゃった?」
気持ち悪いくらいニヤニヤしながら。
「桜庭先輩が今まで1人で頑張ってくれてたことも含めて、俺が伝えたい」
その俺の言葉を聞いた瞬間、瑞季はニカッと歯を見せて笑った。
「その言葉待ってた!」
「え?」
「いつ言うんだよーなんで言わないんだよーこのヘタレチキンー!って思ってた!」
ヘタレチキン…
こいつはにっこーという効果音がつきそうなほど嬉しそうに、容赦ない言葉を放つ。
「お前気づいてるか?俺がハルと茉乃せんぱいのキューピットだってこと!ありがたく思えよ?」
なんだかよく分からないことを言い出した。正直俺は瑞季のことをキューピットだとか思ったことはない。
でもまた否定するとめんどくさいことになるのでそのことには触れないまま、行ってら〜♪と愉快に手を振る瑞季に軽く手を上げ、俺は先輩の元へ向かった。