4限が始まったが、俺は瑞季のせいで先輩のことが頭から離れない。


先輩が委員会のときに言っていた言葉が頭を回る。


誰よりも本が好きで、大切にしたいって思いが伝わってきた。


こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、正直先輩は本が好きなようには見えない。


先輩が静かに本を読む姿とかあまり想像できないし、どちらかと言えば飼育委員とかで学校で飼う動物にかわいいかわいいと騒ぎながら写真を撮っていそうだ。


でも先輩の話を聞くとそれはただのイメージだったということを認めざるを得ない。





『最後にじいじからもらったプレゼントがしおりだったの!しかも手作りの!』

『わたしが小さい頃黄色が好きだったからこの色にしてくれたんだろうけど、カスミソウっていうのがじいじだよね〜!小学生にカスミソウだよ?へへへ……でも、大切』





おじいちゃんから貰ったというしおりを俺に見せながら"大切"とあんなふうに笑って、しおりを作りたいと言う先輩を見れば誰だって思うだろう。


この人は本当に本が好きなんだと。


そして、しおりが作れたらいいと。


今実際、委員長の桜庭先輩がそれを実現している。


しおりを作ることに自分も携われるというのは先輩も喜ぶだろう。


そのことを、瑞季が先輩に昼休み伝えに行くと言っていた。


俺も図書委員だ。だから結局しおり作りで会うことになる。


それはわかっているけれど。


先輩が本を好きになったきっかけを、しおりを作りたいと思ったきっかけを知っているからこそ思う。


俺が伝えたい。