しかし、先輩が来なくなって1週間が経過した。
「ハールー」
休み時間、気だるげに俺を呼びながら俺の前の席に後ろ向きで座ったこの男、
「今日も来ないね、茉乃せんぱい」
瑞季の言った通りだ。
「寂しい?」
椅子の背もたれに肘をついて瑞季はそう聞いた。
「別にそんなことねぇよ」
答えた俺に瑞季は小さなため息をついた。
「そーんなすました顔してるけど、自分で気づいてないの?あれから結構な頻度で廊下をちらちら見てること」
そう言われて初めて、今も廊下を見ていることに気がついてパッと逸らす。
「そんなに気になるなら会いに行けばいいじゃん。会いに行こうと思えばすぐだよ?」
別に気になっているだけで、会いたいわけではない。
…というのを前に瑞季に言ったら"はいはい、そんなの強がりな思いこみだって"と言われたけれど。
それに、会ったところで何になる?会ったところで先輩の気持ちに応えることはできないし、なんて言えばいいのかすらわからない。
「まぁ別にハルがいいならいーけど!」
何も言わない俺に瑞季はいつも通り明るい声で話し出す。
「今の状況を変えたいってもし思ってるんなら、忠告。待ってるだけじゃなんにも変わんないぞ〜」
そう言って自分の席に戻ろうとした瑞季が立ち止まってまた俺の方に振り返る。