昨日の放課後、一緒に帰っているとき、先輩が泣いた。
それも、好きだと言いながら。
今まで毎日のように言っていた言葉だったから、今の今までは先輩にとってそんなことはなんてことないと正直思っていた。
だから今日から会いに来なくなるなんて思っていなかったし、もしかしたら瑞季の言う通り、本当に遅刻しただけかもしれない。
でもそうじゃないとしたら、原因は昨日のことだろう。
先輩は泣きながら俺に好きだと告げて、俺が何か言う間なんてないくらいすぐに走って行ってしまった。
直前に転んで怪我をしてよろけたことなんて信じられないくらいのはやさで。
……気まずくなったのかもしれない。
昨日のことを思い出しながら、ぼんやりそんなことを考えていると、
「おいハル!!」
どこかへ行っていたらしい瑞季が、大声で俺を呼びながら慌ただしく教室に入ってきた。
さっき俺が教室に入るときもどこかから帰ってきたはずなのにほんと忙しい奴。
「ハルお前いいのかよ!」
「急になんだよ、何の話?」
俺の机に両手を付き、少し前のめりに俺に聞いてきた瑞季の言葉の意味は正直意味不明だ。
「茉乃せんぱいだよ!普通に学校来てたぞ!?今見かけた!!」
"茉乃せんぱい"という単語に少し反応した自分もいたが、俺はなんてことないように受け流す。