Maharu side
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いつも通りの朝。
いつも通りの学校の昇降口。
そのはずなのに、俺にとっていつも通りじゃないことが起きている。
「おはよー!」
「おはよ!あれ?髪切ったねー!」
「めっちゃ似合ってるよ!かわいい!」
そんな女子のうるさいくらい大きな声が聞こえてくる。
毎朝、俺の隣でそれ以上にうるさい先輩がいない。
毎朝、俺の登校時間に合わせて偶然を装って会いに来る、意図的だとバレバレな先輩がいない。
そのことを、いつもと違うと感じるようになった自分が不思議だ。
階段を上り、教室へ入る直前、反対側の廊下から歩いてきた瑞季が不思議そうに俺を見る。
「え?ハルなぜに1人?茉乃せんぱいは?」
いつも暑苦しいくらい明るい笑顔でおはようと言う瑞季はそこにはいなくて、俺が1人で来たことに首を傾げている。
「今日は会ってない」
「……え?なんで?」
俺は本当のことを言っただけなのに、瑞季は首を傾けたまま心底不思議そうに俺を見る。
「別に…なんでってことはないだろ。たまたま今日は会わなかった」
「ふーん……茉乃せんぱい遅刻でもしたのかな?」
そう首を傾げる瑞季にはわかんないと返したけれど、なんとなく、会いにこない理由は思いあたる。