そんなことを考えながら少し顔を上げると、目の前にローファーが見えたと思えば、私よりも大きな手がローファーよりも手前に差し出された。


顔を見るより前にわかる。


だってそこにしゃがんで手を差し伸べてくれてるのはわたしの大好きな人なんだから。



「大丈夫ですか先輩」



こくりと頷けば、地面に顎をぶつけてしまった。



「痛った…!」



そんなわたしを見て、真悠くんはふっと笑って、



「先輩、ほら」



そう言って差し伸べてくれていた手を更に前に出した。


その手にそっと自分の手を添えるとキュッと握って強く、優しく、立ち上がるわたしを支えてくれた。



「どうしたら段差も何もないとこで転ぶんですか…」



ため息混じりにそう言って、その後わたしの顔をのぞき込んだ。



「大きな怪我はしてなさそうですね。鼻と顎は赤いけど。痛いとこありますか?」



人間、転ぶときは手が出るもので、顔はどうやら赤くなるくらいで済んだみたいだ。



「先輩、膝擦りむいてますね」



でも足は守れなかったようで。



「大丈夫!これくらいなんとも!真悠くん、立つとき支えてくれてありがとう!」


「どうしたらこんなに派手に転ぶんですか。ほんとにバカですよねどんだけドジなんですか」



いつも通りの毒舌で攻撃してきたかと思えば、



「膝、保健室に戻って絆創膏もらってきましょうか?」



急に優しい声でそんなことを聞いてくる。