「あの頃はわかったって言ったけど、ほんとはあんまりわかってなくて。今ならやっと理解できるからさ。
じいじはわたしが小3のときに病気で天国にいっちゃったんだけどね」



そう言うと、目の前の真悠くんは驚いたような、切ないような顔をした。



「最後にじいじからもらったプレゼントがしおりだったの!しかも手作りの!」



小3のわたしにはじいじが作ったデザインは正直合わなかったけれど、入院中に頑張って作ってくれたものだ。


どんなにかわいいしおりより、どんなに高価なしおりより、わたしにとっては、じいじの想いがつまった世界でたったひとつのしおりだから。



「今でもそのしおりは毎日持ってるし、本を読むときは使ってるんだ!」



ほら!と言って、ポーチの中に入っているしおりを真悠くんに見せる。


それはうすい黄色を背景に白いカスミソウの花が散りばめられているしおり。



「わたしが小さい頃黄色が好きだったからこの色にしてくれたんだろうけど、カスミソウっていうのがじいじだよね〜!小学生にカスミソウだよ?へへへ……でも、大切」



ひと通り話したところで、ポーチにしおりをしまう。



「しおり」



ポーチにしおりをしっかりとしまい終えて、真悠くんの小さい声に顔をあげる。



「え?」



聞き返したわたしに



「しおり、作れたらいいですね」



そう言った真悠くんの笑顔はすごく優しくて、あたたかく感じた。