昇降口について上履きからローファーに履きかえようと下駄箱を開けると、わたしには見覚えのないものが入っていた。


入っていたのは黒い折り畳み傘。


外を見るといまだに土砂降りで。


わたしはこんな黒い折り畳み傘なんて持ってないし、まず今日は傘自体持ってきていない。


誰がこんな折り畳み傘なんて…


そう考えながら記憶をたどると思い当たる人が1人。


え、いや、まさか。そんなわけない。


そう思うけど、やっぱり他に思いつかない。


だってわたしが今日傘を持っていないことを知っているのは真悠くんしかいないはずで。


たぶんこれ、真悠くんの傘だ。



「……相原さん?どうかした?」



固まっていると琴ちゃんの控えめな声ではっとする。



「あ、ごめんごめん!」


「大丈夫?具合でも悪い??」



あら、余計な心配をさせてしまった…



「大丈夫!ほんっとにちがう!!ありがとう!!」



わたしはむしろ舞い上がっているんだ。ごめんね琴ちゃん。



「っていうかさ、相原さんじゃなくて茉乃って呼んでよ!わたしも琴ちゃんって呼ぶからさ!」



苗字で呼ばれたことが少し寂しく感じてそう言えば、驚いた顔をしながりも頷いてくれた。