「わたし、成瀬くんのことが好き」
「え?」
「成瀬くんのこと、好きになっちゃったの…」
え、成瀬くんて真悠くんだよね?真悠くんって苗字成瀬だよね?他の成瀬じゃないよね?
「成瀬くんって…真悠くんのこと…だよね?」
コクリと琴ちゃんは頷いた。
「今日、委員会のみんなが話してたように、わたしも茉乃ちゃんの気持ちは知ってました。だから、好きになっちゃった時、茉乃ちゃんには言わなきゃいけないって思ってたの」
琴ちゃんは少し震えた声で言葉を紡いでいた。
「わたしも、成瀬くんが好きです」
いつからとか、どうしてとか、正直そういうのも思い浮かんだけれど。
きっと琴ちゃんはこれを言うのがすごく怖かったんだろう。
声も手も少しカタカタと震えているように見える。
ただ好きな人ができたという素敵な話が、友達と同じ人を好きになってしまったということだけで打ち明けるのが怖いものに変わる。
それでもその怖いを乗り越えて、勇気をたくさん振り絞って琴ちゃんは言ってくれたんだ。
だからさっき真悠くんのことをぼんやりと見つめていたんだな、と納得した。
「そっかぁ。真悠くんかっこいいもんね!」
わたしがそう言うと、震えながらギュッと握りしめていた琴ちゃんの手が少し緩んだ。