目の前で喜ぶ父と母。
式を挙げたい日があるからと決めていた。
もう頭の中に会話が入ってこない。
食事が終わり、母は片付け。
私はスマホを手に菜月に返事を返す。
“お母さん、式挙げるって… 私、本当に妹になっちゃう”
そう打ちながら送信できなかった。
私はまだ、現実視が出来ていなかった。
父と母の結婚式を見届けたら、家族として、改めて現実だと思い知る。
今はただ、碧斗だけを好きで思ってきた。
妹だなんて自覚あるわけがないから。
式はそれほど私には重く感じるものだった。
「 伊織、ケーキあるの、食べる?」
「 ううん、いらない 」
「 そう… 」
普通にしなきゃ、普通に……
心配かけたらダメ。
「 伊織、ねぇ あなた…… 」
「 もう帰るね、明日仕事あるし、碧斗と帰るよ 」
「 伊織…… 」
これ以上いたら、私、何言い出すか……
お母さんに余計なこと言っちゃいそう。
帰らなきゃ……
父の部屋にいる碧斗を呼び、帰ろうと急がせた。
玄関先で父と母の心配する顔に、私は背を向けていた。