このアイスは私と菜月が新規のお客だから出されたものだ。
菜月のアイスはシャーベットに丸いクッキーがある。
菜月はアイスを食べながら私に言った。
「 伊織、兄に恋したら? 悪魔みたいなイケメンでもいいじゃん。
始まりが最悪でも、あんたたち縁があるみたいだしさ、嫌いを好きに変えてみたら?」
アイスのチョコが溶けて、バニラが見える。
このアイスのように、嫌いが好きに変わるようになるだろうか……
チクリと微かな痛みが少しだけ強くなった気がした。
店を菜月と出ると、冬の冷たい空気が気持ちよく感じた。
「 ……食ってねぇし、あの女 」
碧斗が席に来て呟いた一言。
「 碧斗、何してんだ… あれ、このアイス食べてないじゃん、あらら~ 」
「 アイス嫌いだろ、もったいねぇ 」
「 碧斗の特別アイスなのにな 」
私は知らなかった、サービスのアイスは碧斗からだったと。
通常、新規のお客には統一して口直しになるシャーベットを出している。
しかも会計では少し割引されていた。
それを知るのはまだずっと先……
「 菜月、送ってくれてありがとね、また明日ね 」
「 いいよ、また行こうね、ごちそうさま 」
菜月、次は利香も一緒にね。