それから何日か経って、上体を少し起こすことができるようになった。

昨日は体調がよかったと思ったら、突然脈が乱れて飲み薬や点滴のバッグが増える日もある。

だけど、主治医である悠さんが必ず毎日2回は診に来てくれたから、それだけで私の気持ちは安定していた。


ある日、たくさんの検査をしたあとに、悠さんは神妙な面持ちで私の病室へ入って来た。

「主治医として、凜に言わなきゃいけないことがある」

不安は募ったけど、覚悟を決めて首を縦に振った。

「この病気には後遺症が残ることがある。
心電図異常、不整脈、多くがこのくらいの軽微なものだ。
ただ、心不全が慢性化するケースもある。
どんな経過をたどるのか、もちろんそれは患者自身の回復力にもよる。
だけど、一度壊れた部分の心筋は完全に元には戻らないのは確かだ。
例えば100%で動いていた心臓が、今の凜は80%しか動いていないとすると、100%の状態まで回復するのは難しい」

淡々と語る『医師』の声は殺風景な病室に冷たく響く。

それでも悠さんは、真っすぐに私の目を見て現実を告げる。