私、悠さんを傷つけたのに…

悠さんを信じられなかったのに…

「疑ってごめんなさい…」

菊川先生からあの日のことを聞いていたのか、悠さんは特に驚く様子もない。

「いや、俺が悪かったんだ。勝手に凜のことを相談して…
凜は無意識に夢にうなされてるんだと思ったから、なんとか凛が気にしないように内緒で相談しようと思った。
嘘をついて本当にごめん」

私の頬をつたう雫を、悠さんは掬い取る。

「あの時…8年ぶりに菊川と再会したとき、以前の俺だったら顔を合わせるのも嫌だったと思う。
だけど、凜がいたから俺は変われたんだ。
8年分の傷は、いつの間か凛に癒されてたんだよ」

悠さんは私の髪をなでながら、そっと唇に口づけた。

「凛、愛してるよ」

悠さんの大きな手が、温かい唇が、穏やかな声が、酸素マスクなんかしなくても、私を楽にしてくれる。

やっぱり悠さんは、私をいつも助けてくれるヒーローみたいだ。