遠ざかっていく
意識の中で結華の声が
聞こえた気がした……
あれ? 何で? そこで意識が途絶えた。
目が覚めると、そこは病院だった。
自分が何で此処に
いるのか一瞬わからなかったけど
脇腹に痛みを感じて思い出した。
あぁ、そういえば
刺されたんだっけ。
それは約二時間前まで遡る。
―二時間前―
僕は恋人の結華と一緒に
デパートに来ていた。
そこで事件が起きた。
六階の宝石店で強盗事件が起き
犯人が逃走。
同じ階にいた僕達は
そんなこととは知らず
二つ隣のアクセサリー屋を
出たのだが、運悪く
宝石店から逃げてきた
強盗と鉢合わせてしまったのだった。
そして、その犯人は
逃走経路の真ん中にいた
結華が邪魔だったのだろう、
叫びながらナイフを結華目掛けて
振り回しながら走ってきたところを
僕は庇うように前に出た。
結果、僕が刺されて
病院(此処)にいる。
『柚夜、目が覚めたんですね』
病室のドアを開けて
入って来たのは
先程、庇った恋人。
『結華は怪我してないかい?』
僕が庇ったとはいえ
何処か痛めていないか心配だ。
『大丈夫です。柚夜のおかげで
何処も怪我せずに済みました。
ありがとうございます』
ホッ。
よかった。
『すみません』
シュンと下を向いて謝ってきた。
『僕が君に怪我してほしくなくて
庇ったんだから謝る必要はないんだよ』
これは僕の自己満足。
結華が気にすることじゃない。
刺された傷は痛むが、
時間が経てば治る。
『結華、そんな入口に
いないで 側に来ておくれ』
多分、罪悪感から
近くに来ようとしないんだろう。
まったく。
『君が来てくれないなら、
ベッドから出て僕から
そちらに行くよ?』
僕の言葉に
慌てた様子でこっちに来た。
『あなたは刺されたのですから
安静にしていてください』
ベッドの側にあった
椅子に座って僕の手を
握って泣きそうな表情(かお)で
もう一度、謝ってきたから
結華の頭をナデた。
本当に結華が怪我しなくてよかった。
『私はあなたが刺された時、
咄嗟に動けなく、アクセサリー店の
店員さんが救急車を
呼んでくださったのです』
僕を刺した強盗犯は逃走したらしい。
まぁ、あの状況で
犯人を取り押さえるなんて
誰にもできなかったと思うけど。
『そっか、怪我が治ったら
お礼に行かなきゃいけないね』
話しながらいまだに
下を向いている結華の
つむじにキスをした。
きっと、怖かったんだろう。
僕が刺されて病院に運ばれ
目を覚ます間、結華は
怖い思いをしたに違いない。
逆の立場だったら
気が狂いそうになっただろう。
『柚夜、あなたがこうして
生きていてくれてよかったです。
庇っていただき、
ありがとうございました』
あの時、
結華を庇うことしか頭になかった。
『さっきも言ったけど
僕が君に怪我して
ほしくなくて庇ったんだよ。
だけど、怖い思いを
させてすまなかったね』
結華に言いながら
僕は心の中で呟いた。
また同じようなことが
あったら、庇うだろうと。
僕は君のためなら
何時でもこの命を
差し出す覚悟はできているんだよ。
でも、これは僕だけの秘密だ。
『柚夜、早く治してくださいね。
家で一人でいるのは寂しいですから』
とはいえ、結華を
一人にするわけにはいかないから
まだまだ、生きなきゃいけないけどね。
『うん。なるべく早く治すよ』
愛する人を守れてよかった。
意識の中で結華の声が
聞こえた気がした……
あれ? 何で? そこで意識が途絶えた。
目が覚めると、そこは病院だった。
自分が何で此処に
いるのか一瞬わからなかったけど
脇腹に痛みを感じて思い出した。
あぁ、そういえば
刺されたんだっけ。
それは約二時間前まで遡る。
―二時間前―
僕は恋人の結華と一緒に
デパートに来ていた。
そこで事件が起きた。
六階の宝石店で強盗事件が起き
犯人が逃走。
同じ階にいた僕達は
そんなこととは知らず
二つ隣のアクセサリー屋を
出たのだが、運悪く
宝石店から逃げてきた
強盗と鉢合わせてしまったのだった。
そして、その犯人は
逃走経路の真ん中にいた
結華が邪魔だったのだろう、
叫びながらナイフを結華目掛けて
振り回しながら走ってきたところを
僕は庇うように前に出た。
結果、僕が刺されて
病院(此処)にいる。
『柚夜、目が覚めたんですね』
病室のドアを開けて
入って来たのは
先程、庇った恋人。
『結華は怪我してないかい?』
僕が庇ったとはいえ
何処か痛めていないか心配だ。
『大丈夫です。柚夜のおかげで
何処も怪我せずに済みました。
ありがとうございます』
ホッ。
よかった。
『すみません』
シュンと下を向いて謝ってきた。
『僕が君に怪我してほしくなくて
庇ったんだから謝る必要はないんだよ』
これは僕の自己満足。
結華が気にすることじゃない。
刺された傷は痛むが、
時間が経てば治る。
『結華、そんな入口に
いないで 側に来ておくれ』
多分、罪悪感から
近くに来ようとしないんだろう。
まったく。
『君が来てくれないなら、
ベッドから出て僕から
そちらに行くよ?』
僕の言葉に
慌てた様子でこっちに来た。
『あなたは刺されたのですから
安静にしていてください』
ベッドの側にあった
椅子に座って僕の手を
握って泣きそうな表情(かお)で
もう一度、謝ってきたから
結華の頭をナデた。
本当に結華が怪我しなくてよかった。
『私はあなたが刺された時、
咄嗟に動けなく、アクセサリー店の
店員さんが救急車を
呼んでくださったのです』
僕を刺した強盗犯は逃走したらしい。
まぁ、あの状況で
犯人を取り押さえるなんて
誰にもできなかったと思うけど。
『そっか、怪我が治ったら
お礼に行かなきゃいけないね』
話しながらいまだに
下を向いている結華の
つむじにキスをした。
きっと、怖かったんだろう。
僕が刺されて病院に運ばれ
目を覚ます間、結華は
怖い思いをしたに違いない。
逆の立場だったら
気が狂いそうになっただろう。
『柚夜、あなたがこうして
生きていてくれてよかったです。
庇っていただき、
ありがとうございました』
あの時、
結華を庇うことしか頭になかった。
『さっきも言ったけど
僕が君に怪我して
ほしくなくて庇ったんだよ。
だけど、怖い思いを
させてすまなかったね』
結華に言いながら
僕は心の中で呟いた。
また同じようなことが
あったら、庇うだろうと。
僕は君のためなら
何時でもこの命を
差し出す覚悟はできているんだよ。
でも、これは僕だけの秘密だ。
『柚夜、早く治してくださいね。
家で一人でいるのは寂しいですから』
とはいえ、結華を
一人にするわけにはいかないから
まだまだ、生きなきゃいけないけどね。
『うん。なるべく早く治すよ』
愛する人を守れてよかった。