「それで?話ってどうしたの」
…咄嗟にそう言ってしまったけど、特に話すことも…ない。
「相談したくなったの?」
「…そういうわけでは」
「もう授業終わったよね。何してるの?」
「…っそれは…」
「勉強?」
「…そうです」
「嘘だね」
またバレた。
私の嘘が下手なだけ…?
この人がすごいだけ…?
「言ってみなよ」
…別に信頼してるわけじゃない。
というか生徒に校則破らせようとするんだから、まともな先生じゃない。
そう思うのに何だろう、この気持ち。
私のことをよく見てくれてるのが嬉しい。
突拍子もないことしてくるのが新鮮で面白いとさえ感じてしまう。
「…妹みたいな存在が、恋愛対象になると思いますか」
「兄みたいな存在が、恋愛対象になると思う?」
聞き返された。
全く同じような形で。
「……」
「それが答えじゃない?
きっかけがあれば、ね」
きっかけ。
きっかけって何だっけ…
何があればきっかけになる?
「手伝ってあげようか」
「…手伝う?」
「俺とデートしてるところ見せつけるの」
「そんなので上手くいきますかね」
「真面目なやつだからすぐに食いつくよ」
「…よくわかりましたね、真面目だって」
私がそう言うと、一瞬だけ先生の動きが止まったように見えた。
「…っ。
ゆずちゃんがこれだけ優等生だからね。
なんとなく想像つくよ」
見えただけ…だったようだけど。