授業が終わった。
家に帰る時間。
だけど、どうも足が進まない。
…帰りたくない。
こんなこと初めて思った。
生憎、勉強する気分でもない。
…保健室?
ないない。あんな人のところに自分から行くなんて…ありえない。
「…!」
そんなことを考えていると前から先生らしき人が歩いてくる。
保健室の先生ならずっと保健室にいてよ…
もう面倒くさいのに巻き込まれたくないんだって…
「…知らないふりしよ」
先生に背を向ける。
きっと気付かれてない…はず。
なのに。
「ゆずちゃーん!」
…無視しよう。気付かなかったふり。
「あれ、聞こえてないのかな」
実は聞こえてます。意図して無視してます…
「聞こえてないならもう少し大きな声で…
教室でーマシュマロをー…」
ばっと先生の方に向き直し全速力で走る。
一体何を言い出そうとしているんだ。
あんまりいないとは言っても、ここから数人の生徒と教師が見える。
そんなところでマシュマロ食べたなんて知られたら…!
慌てて先生の腕を引っ張る。
「やっぱり聞こえてたんだ。
こんな人気のない場所に連れて来て何するつもり〜?
ワルイコになり始めたゆずちゃん?」
「…話です」
人気がないといっても単に階段の踊り場。
どうしてこうもこの人は軽いのか…