「…サイッテー!」
…私はいわゆる"修羅場"というものに立ち会ってしまったのか。
5月、ゴールデンウィークが終わった平日のお昼休み。
保健室の先生が女子生徒に平手打ちを食らっている。
「私は本気だったのに!!」
「…俺はそうじゃなかったの。ごめんね」
その女の子は涙を流しながら、保健室の扉のところにいた私の隣を過ぎていった。
…今日は出直そうかな。
「変なとこ見せちゃったね。
どれ、怪我か?体調悪い?」
「あ、えっと…」
さっきの体育で突き指をしてしまって、冷やすものを借りに来た。
流石にこの状況で…
非常に気まずい。
「…はい。
じゃあ放課後にでもこれ返しに来てくれる?」
「わかりました」
「あ、そうそう。名前聞いとかなきゃね」
「南條ゆずです」
ぺこりと一例してから保健室のドアを閉める。
そして氷のうを指にあてながら教室に戻る。
先生、頬が少し赤くなってた。
痛そうだったな…