「本当かしら。あんたはいろんなことが偏っているから心配だわ。ちゃんと食べているんでしょうね?」
「まあ、うん」
適当に相づちを打つ私に、彼女はため息をこぼす。
「あんまり結城さんに手間をかけさせたら、嫌われちゃうんだからね」
母は私と同様に、いや、私以上に結城社長のことを信頼している。
デザート・ローズで働くことが決まった当時、彼は都内に不案内な私たち母子に代わってマンションを手配してくれたし、わざわざここまで足を運んで母に挨拶までしてくれた。
『大事なお嬢さんは、責任をもってお預かりします』
そう言って、菓子折りを差し出す結城遼介に、母は一発でノックアウトされたのだ。