暫くそのままの体制でいる。




夏の夜風が俺たち2人のそばを通り過ぎていく。




『小夏、戻ろうか。』




俺が言うと小夏は閉じていた目をゆっくりと開いて微笑んだ。




『こ、なつ…?』




その笑顔があまりにも悲しそうで俺はなぜだか不安になった。




「なぁに?」




そう答える小夏はもう既にいつもの小夏に戻っていた。




『なんでも、ない。』




俺は小夏が離れていかないようにぎゅっと強く、強く手を握った。




いつの間にかこんなにも小夏が大切な存在になっていたなんて。




入院してきた初日に変な出会い方をして。




それでも笑顔にしてくれる小夏に俺は恋をしていたんだ。




自分でも知らぬ間に急速に惹かれていたんだ。




小夏が…好きだ。




離れたくない。




俺はまた小夏の手をぎゅっと握ると小夏はこっちを向いて笑いながら握り返してくれた。




その力があまりにも弱くてやっぱりまた不安になった。