妖と人と

少年には特に意味はないだろう。



ただ、

邪魔するなと一瞬、横で口論していた2人に目を向けた。



「…」

「「!」」



伝わらなくても良い。

邪魔など出来るはずも無いからな。



「っん…ハァ…ハァ」



「え、落ち着いてる…」



後ろでそんな声が聞こえたが、無視して再開する。



少年を見て、視る。

今の私では、人並み程度でしか視れないが。



見下ろしながら体全体を視る。



「…」



分からない。

だが、封じていた力とやらが原因で間違いない。



そして、4家だけでは何も出来ない。



視るのを辞め、隣で呆然としている風魔に声を掛ける。

…いや、掛けようとした。



ーガシッ



ー「!?」



ん?



着物の裾を横になる少年が掴んでいた。



後ろで驚いているのがよく分かる。



「何だ」

「見つ…けた」



見つけた…って。



記憶に重なる言葉だった。



さっき私の名を口にしたことといい。

「巡くん!?」



黒墨の華が大声でそう呼んだ。



少年は巡というらしい。



ーガシッ

…って。

「ちょっ、大丈夫?えっ…」



風魔の言葉も聞こえないというように、

私の服を掴んで、這い上がる様に立ち上がって来た。



「今は大人しくし「巴衛っ」」







胸の辺りまで来て、はっきり聞こえた私の名。



私の目を真っ直ぐ見る桜色の瞳。

見覚えなどない。



だが、懐かしい気がする。

そして、同時に思った。



…あぁ、やはりあの時の人の子なのだろう。



記憶の中にある、人影。



思い出したくない、記憶の一部。



でなければ、私の名を知るはずがない。

そして、こうして離すまいとすることも。