「大した執念だ。夕城における丹下の血への因縁とはこれ程のものか」

呟く龍鬼に。

「坊は特別なんですよ」

椿は倒れた牡丹に歩み寄り、彼を担ぎ上げた。

華奢な体の割に、大した力だ。

「夕城屈指の大剣豪、夕城 翡翠に敵愾心すら抱くほどの向上心を持っていますから、坊は。ならば夕城 翡翠以降、好敵手と謳われた丹下の血に強い因縁を感じるのも当然かと。とはいえ」

牡丹を担いだまま、椿は一礼する。

「今回の件は明らかに坊の方が悪い。お騒がせして申し訳ありませんでした」

「…いや」

龍鬼も、首を横に振る。

「俺の未熟さを再認識させられた。よく止めてくれた。感謝する、夕城 椿」