「アンタなんかに洋はぜったい渡さない!諦めてよ!私は中学3年生ではじめて洋と同じクラスになったときから、ずっと洋が好きだったんだから!」
はるちゃんの荒々しい声が、静かな屋上に響く。
はるちゃんの洋くんを想う気持ちは、痛いほどに感じる。
洋くんのことが大好きなんだなって、普段から見てて伝わってくる。
だけど…。
だからといって、洋くんを諦めることはどうしてもできない。
私はひたすら「ごめんね」と繰り返し、ただただ涙を流すことしかできなかった。
「洋を諦めるって言うまで許さない‼洋の彼女になるのは私なんだから!」
怒りに身をふるわせるはるちゃんの怒号にまざり、屋上のドアをガチャリと開く音と足音が聞こえた。
はるちゃんと同じタイミングではっと顔を向けると、そこにいたのは慌てて走ってきたのか…。
ハァハァと肩を小刻みに揺らす洋くんがいた。
「俺が誰と付き合うとか、それを決めるのは遥じゃないだろ?俺自身だから」
洋くん、どうしてここに⁉
もしかして、校門から屋上にいる私とはるちゃんの姿が見えたのかな?
慌ててブレザーの袖口で涙を拭いたけれど、こちらに向かって歩いてくる洋くんの目に私は映っていないみたいだった。