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春 side

ゴールデンウィーク。結局、勉強に時間を使ってしまった。大樹を遊びに誘う勇気が私には、ない。
ゴールデンウィークも終わる頃、インスタントコーヒーを飲みながら、ニュースを聞きながら、勉強をする。
「次のニュースです。三年前に大地冬美(だいちふゆみ)さんを当て逃げした犯人が捕まりました――」
「冬真さんのお姉さん……」
ニュースを聞いてどうということはないけど、少し嬉しかった。
冬真さんも嬉しいはずだ。
私はインスタントコーヒーを冷めないうちに飲みほした。体が少し暖まった気がした。


End





冬真 side

姉さんの墓参りを終え、家に帰って来た。母さんは仕事でいない。寂しい空間を少しでも賑やかにしたくてテレビをつけた。
「次のニュースです。三年前に大地冬美さんを当て逃げした犯人が捕まりました――」
「!!」
驚いた。そして、涙が溢れだした。
「姉さん……姉さん……やったよ……」
墓参りの時に置いてきた姉さんの好きなイチゴ大福。もうひとつはオレが食べる予定だったが、オレはそれを仏壇に置いた。





約一週間後の五月の第二土曜日。
父さんが久しぶりに帰って来た。
「冬真……お前がやったのか?」
「まあ……ね」
「良くやった! 父さんは嬉しいぞ!」
「あ、ありがとう。父さん」
「ねーえ、今日は一緒に外食なんてどう?」
母さんも機嫌がいい。
「そうだな」
あの日以来、冷えきっていた父さんと母さんの関係は良くなった。また一緒に暮らすかも知れなくなった。再婚もあり得ると父さんは言う。
この幸せがずっと続く事を願った。


End