彼は高校1年生ながら先輩にも同級生にも人気で、噂ではファンクラブができているらしい…。

確かに顔立ちは整っているし、背は高いし。
でもその時には恋愛感情なんてなかった。

正確に言えば、そんな感情をもってはいけないと思ってた…なのかな。



なぜなら…


「由衣、おばさんは?家、鍵しまってて開いてなかったんだけど?」

「あーごめん。今日夜勤なんだよね。どうしたの?」


彼は由衣に紙袋を手渡した。


「母さんがケーキ作りすぎたから渡しに来た。」

「え、そーなの!?たいちゃんママにありがとうって言ってて!まなみ一緒に食べよ!!」

「全部1人占めして食べて太るなよ?」


彼はいつも学校で話しかけてくるファンの女の子に対するめんどくさそうな態度とは全く違い、クシャっとした笑顔を見せた。

橘くん、きっと由衣が好きなんだなってこの時に気付いた。


だからわたしは彼を応援することにした。
私が好きになっちゃいけない人だからって。

彼はファンも多いし、わたしみたいな何も取り柄のない子が好きになっちゃだめなんだって思ったんだ。

あーあ。
高校生活で初めて恋できると思ったのにな…。


そう思っていたら、彼はペコっとわたしに頭を下げ隣の家に入っていった。


隣の家なんだ…。由衣の幼なじみなのかな?


そのあとケーキを食べながら由衣は色々話してくれた。