しかし、この佐江という女は純情な町娘で歳三という男に泥沼に足を取られ、じわじわと深みへと足を引っ張り込まれていくこととなる。
しばらく二人の関係性は続いた。
二人の関係が密接するほど、人目を恐れてくる。
人目を恐れる様になっては、もはや罪悪を犯しつつあるかの如く、心もおどおどするのであった。
ある日の晩、東一郎は久しぶりに歳三の肌を感じたくなり、みずから歳三の部屋へと向かったのだが、障子を開けると、歳三の姿は無く東一郎は不審に思った。
厠(かわや)とも思ったが、妄想に近い恐れを東一郎は抱いた。
足を忍ばせ、佐江の部屋へと近付き障子を勢いよく開けた。
そこには裸で絡み合う歳三と佐江の姿があった。
佐江はまるで溺れかけている人のように、華奢の体で歳三の大きな身体にしがみついていた。
「おっ…お父様!!」
歳三と佐江は弾かれたように、お互いから離れたのだが、東一郎は憤怒に狂気めいた殺気がこもり二人を睨みつけていた。