江戸大伝馬町の木綿問屋。
通称、亀店。
「本日からお世話になります。
石田村より参りました歳三でございます」
歳三は主人、番頭に頭を下げた。
さすがは江戸でも指折りの鶴店の支店である。
支店といっても、店構えは鶴店にも負けていない立派な大店だ。
「番頭の東一郎です。
よくぞ来てくれたね。
歳三くん、共存共栄、共に励みあおうではないか」
鶴店の番頭と違って、人柄がよく歳三を可愛がってくれた。
「歳三くんはハサミの扱いが上手だね」
「君は商人の才覚があるよ」
鶴店では小言ばかり言われてきたが、亀店ではその逆に褒め倒しであった。
居心地の良く家庭的な大店だ。
何より番頭である東一郎の娘が歳三好みであった。
名前は佐江といった。
鈴のような可愛らしい声に、歳三にも負けぬような絹のような白い肌。
小柄で可愛らしい女性だ。
佐江もまた、歳三に好意を寄せていた。