「喜六兄ィ!おかえり!」

 歳三は土手を駆け上がり喜六のもとへと向かった。


「えらくご機嫌じゃないか」

「あぁ、これで全部だ!
さーて腹減っちまったよ」


 喜六はまさか、と思いながら歳三と共に母屋へと入ると石田村の子供達の前には膳部が置かれ、御菜(おかず)はなく、白米のみが置かれている。
白米以外、何も出ていない献立に違和感を感じた喜六はナカに訊いた。
しかし、ナカは口籠もり、何も言わない。

 歳三は部屋に入るや否や、咳払いをすると、子供達の注目が歳三に集まる。

「本日は実に御苦労であった。
君達のおかげで無事に牛革草を摘み取る事が出来た。
働きに応じたぶんの報酬を与えよう」


歳三は紙を広げながら読み上げた。


「三番隊!五番隊!一番隊!二番隊!四番隊!
これが早くに摘み終わった順序である。
しかし、これを見ろ!」


歳三の手には先ほど喜六が見た数本の牛革草が握られている。

「この数本は五番隊の管轄内に生えていたものだ。
よって順番を二つ降格させる」


子供達はざわつき始めた。

「妥協は許さない、そう言ったはずだ。
よって順序は三番隊、一番隊、二番隊、五番隊、四番隊と組み替える!」