「考えたなァ、トシ」
「あぁ、彦五郎さんも来ていたんだ!」
佐藤彦五郎はのちにノブと夫婦の契りを結び、歳三の義兄となる。
「さて、私はあの子達の兵糧でも作ってこようかしら」
兵糧という言葉に彦五郎は噴き出した。
「兵糧とは、上手い事言うなァ。
トシも隊を作っていくとは、なかなか思いつかん発想をしよる」
「あぁ、牛革草は群生していればいいけど、まばらだろ?
だから一番隊から五番隊まで分けて、それぞれ請け負う範囲を手分けして採るようにしたんだ。
隊内で二人は探索役で、牛革草を探して見つけたら隊員に教えれば良い」
なるほどな、と彦五郎は頷いた。
「しかし、あの娘達にやらせるのはどうだろう」
彦五郎の目には幼女達が映っていた。
「牛革草は根からするりと抜ける。
でも石田散薬に根は使わない。
摘み取った牛革草の根をあいつらは取り除いていくんだ。
無駄がないだろ?」
ほほう、と感心し彦五郎は子供達が切磋琢磨と牛革草を採る様子を眺めていた。
(なるほどな。
商人(あきんど)にしとくにゃ勿体無いな)
多摩川の浅瀬がキラキラと美しくきらめき渡った。
彦五郎が歳三への期待しているきらめきと、どこか似ているように感じた。