チェックインカウンターに並ぶ人を、かき分けながらリサの姿を探す。

 ケアンズ国際空港は、それほど広くは無い。

 絶対に探し出せるはずだ。


 日本行の便まで、まだ時間はある……

 だが、日本に行くとは限らない。

 シドニーか?

 ブリスベンか?

 とにかく空港の中を走りまわる。


 どれぐらい探していただろうか? 

 リサの姿を見つける事は出来なかった。



 疲れ切った体を、出発ロビーの椅子に崩れるように下ろした。


 どうしよう?


 ふと、空港を見渡すと、成田空港でリサにカイトがぶつかった時の事が目に浮かんだ。

 カイトに差出仕した手の動きが優しげで、思わず顔を見てしまった。

 心配そうな顔が色っぽくて、一瞬胸が高鳴った。

 慌てて、冷静を装いカイトを叱った。



 あの時、カイトがリサにぶつかってくれた事に、今更ながら感謝する。


 偶然にも隣に座った機内の席。

 運命だったんだ……


 カイトと寄り添うように眠るリサの寝顔が可愛くて、しばらく見つめていたなんて言えなない。

 自分の存在を少しでも残したくて、リサの肩に自分のジャケットをかけた。



 ホテルまで送ろうと思ったが、きっぱりと断るリサを見て、益々好感度が高くなった。

 軽はずみな旅行者ではないと……


 僕は、コンドミニアムの名前を聞いて、また会えると確信した。


 いつも、カイトに先を越されて、まともに話が出来なかった。

 カイトに嫉妬さえした事もある。


 でも……

 あの夜、僕は自分を押さえる事が出来なかった。

 リサに綺麗な黒い瞳が、僕の胸を高鳴らせた。

 思わず唇を奪ってしまったら、もう、自分を止める事が出来なっかった。


 日本へ帰ってしまう前にと、焦りもあったのかもしれない。


 もちろん、一夜限りなんて思ってない。

 絶対に離したくなくて、あの時、リサを抱いたのに……


 何一つ、告げないまま、消えてしまうなんて……



 僕は、両手で頭を抱えこんで、泣きたい気持ちを必死で抑えた。


 まさか自分が、女一人の事に、こんなに振り乱れるなんて……


 いつから、こんな事になってしまったのか?


 僕は、カイトと仕事の事だけを考えて、スマートに生きていくつもりだった。

 女に振り回されるのは、もうゴメンだと思っていた。


 だったら、カイトと二人、気楽に生活して行こうと思っていた。

 いや、していけると思っていた。


 それなのに……

 こんなに、人を好きになってしまうなんて……



 だったら、出会わなければ良かったのか?


 だけど……

 この数日の、カイトと三人の幸せな時間を、嘘だったとは思いたくない。


 信じたい……