しかし、思ったより大変な事態になっていて、ケアンズに戻った時には、すでに四時を回っていた。

 カイトの迎えまでには時間がある。


 大丈夫だ。

 リサの元まであと少しというとこで、胸のポケットのスマホが鳴った。

 秘書からだ。

 仕方なく電話にでる。


『社長。今日、ブラウングループの会長とお会いする予定ですが、今、どちらに?』

 しまった……

 四時半に会う予定だった。


 まあ、それほど時間はかからないだろう。



『今、向かっている』

 僕は又、車をユーターンさせた。



 本社となっているホテルの中にある社長室へと向かうと、すでに会長は待っていた。

 しかし、一人では無く、娘のルーシーを連れていた。

 思わず気が重くなった。



 ブラウングループから出す新作発表会を,このホテルでやりたいとの話だ。

 大規模な発表会になるが、これは、一か罰かの掛けのようなもの。

 ブラウングループの経営は最近おもわしくないという噂もある。

 この発表会が運命の分かれ道になりそうだ。


 果たして、かかわってもいいものか? 

 だが、問題はビジネスの話だけではない。


 ルーシーとの婚約の話を迫られているのだ。