リサの滞在するホテルに仕事のふりをして行き、さりげなく食事に誘う作戦だ。


 しかし、もう少しでリサの元へと言う時に、胸のポケットからスマホが鳴り出した。

 嫌な予感がしたが、出ないわけにもいかないのでスマホを取る。


『ジョン! 今どこだ』 

 電話の相手は、僕の親友でもあり、副社長のダニーだ。


『どこって、コンドミニアムで確認したい事があって』

 なんとなく、言い訳しているようになってしまったのだが。


『それどころじゃない。ポートダグラスのホテルの改築でトラブルになっているらしい。直ぐ行ってくれ』


『お前は行けないのか?』


『バカ! 俺はこれから、パースで契約だ! 忘れたわけじゃないだろ?』


『もちろんだ、すぐ向かうよ』

 パースでの大きな契約がある事など、すっかり忘れていた。

 まあ、ダニーなら問題ないと思っていたのも確かだが……



『頼んだぞ!』

 ダニーの声に、僕は仕方なく車をユーターンさせた。



 ポートダグラスまでは車で一時間程だ。


 まあ、戻ってから、リサを誘えばいい。


 まだ、この時は、そんな事を考えていられた。