熱帯雨林の中を、ジョンの運転する車は爽快に走る。

一時間ほど、シティから離れただろうか? 

少し開けた駐車場に車を停めて降りると、遊歩道が続いている。

森林浴で癒された先には、広い川が流れていて、地元の人達の遊び場となっていた。

ワニでも居るんじゃないかと思うが、水遊び場と解放されたその場所は、川の流れが違うらしく、心配ないとのことだ。


 カイトは、私の手を引っ張り川へと入る。


石に躓き、よろけた私の体を、ジョンがしっかりと支えた。

なんだか、嬉しいよな、恥ずかしいような……

 カイトも、何か感じるのか、いつもより、私に甘えて来る気がする……


 大きな石の上に座り、二人の姿を見つめる。


 私は、これから、どんな決断をすればいいのだろうか?


 ジョンは、ああ言ったが、私の何処を好きだと思ったのだろうか?


 そう言えば、バツイチだって事も言ってなかった。

早めに言っておいた方がいいかな……


 一度失敗した、トラウマが胸の中で不安となって重なっていく。

 私は、ジョンが思うような女じゃないかもしれない……


 ジョンの気持ちが、どれだけ本気なのか分からなくなってしまう……

 誰かを好きになるなんて、もう無いと思っていた……


 
 でも、結婚した時に抱いた、自分が自分でなくなっていくような不安はない。


 これは、今だけの物なのだろうか?

 また、あの時はそう思ったと、過去の思いになってしまうのだろうか?


 私は永遠と言う事に、臆病になっていた。


 人を信じるという勇気が、まだ、私の中に無かったのかもしれない……



 私の表情に気付いたのか、ジョンが川から上がってきた。

「ごめん…… 無理に色々考えさせてるね……」

「あっ」

 私は、心の中を見抜かれた事に、下を向いてしまった。


「リサの、都合もあるよね…… ゆっくり、話し合って行こう」


 ジョンは、優しくほほ笑むと、私の唇に軽くキスをして、カイトの元へと戻って行った。



 ジョンは、本気で私の事を考えていると言う事なのだろうか?


 気持ちが分からないまま、体を重ねてしまった…… 

 
 決して後悔している訳では無いが、大人と言うのは複雑な生き物だと思ってしまう……