特に予定など決めずに、その日の気分で行動する。

最高の贅沢な時間だ。


昨日は列車で、キュランダまで行って一日過ごしてきた。


今回はちょっと奮発して、ベッドルームとリビングキッチンが別のデラックスルームを予約した。

 広々としたテラスからはプールが見下ろせるようになっている。

 テラスで本を読みながら、ブラックコーヒーを口に運ぶ。

 午後は、少し泳いで、ショッピングにでも行こうかなど考えていた。



「リサ―!」


 テラスの下の方から声が聞こえる。

 私の事だろうか? 

 ケアンズになど知り合いは居ないし…… 




 不穏に感じながら、テラスの下のプールを覗く。



「リサ―!」

 大きな声を出し、手を振っているのはカイトだ。



「カイト? どうしたの?」


「リサ、泳ごうよ!」


 海水パンツ姿のカイトの横に、ジョンも海水パンツにタオルを首にかけ立っていた。


「わかったわ。ちょっと待っていて……」


 私はテラスからそう叫ぶと、部屋の奥のクローゼットから水着を取り出した。

 ビキニの上にショートパンツタイプものを履き、ラッシュガードを羽織る。


 顔や足に日焼け止めを塗りながら、一人の優雅な時間を邪魔されたにも関わらず、何故か胸が躍っているのが分かる。


 ここ数日、喋る相手もおらず過ごしていたからだろうか?