「そろそろ、寝たらどうだ?」

 ジョンの言葉にカイトは……


「もっと、リサと遊ぶ……」

 と言いながら、ウトウトとしはじめ、私の腕に頭を寄せてきた。


「カイト、こっちだ!」

 と彼が、カイトを引っ張ろうとしたが、カイトは、私の腕を掴み離さない……


「いいですよ。気持ちよさそうにしてますから……」


 私が言うと、ジョンは本当に困ったようにため息を着いた。


「すみません…… 女性にこんなに懐くなんて、珍しいんです。せっかくの旅なのに、申し訳ありません」


 ジョンはそう言って、カイトの寝顔を優しい瞳で見た。



「こんな出会いもあるから、旅は楽しいんですよ」

 私は心からそう思って言った。


「お一人で旅行ですか?」


「ええ……」


「オーストラリアに知り合いでも?」


「いえ。何度か旅行した事はありますが、知り合いはいないです」


「そうですか? 今回はどちらへ?」


「仕事の疲れも癒したいので、しばらくケアンズに滞在するつもりですが、気が向いたら、何処か行ってみようかとも思っています」


「私も、ケアンズに住んでいますので。何か困ったら言って下さい」


 彼はそう言うと、一枚の名刺を出した。


 ジョン・ジョンブラウン、ホテルの名前が入っている。

 ホテルに勤めているようだ。


 「ありがとうございます」

 私は、大事に名刺を受け取ると、そっと鞄のポケットにしまった。



 カイトの寝息を聞いているうち、いつの間にか、ウトウトと眠りに入ってしまったようだ。