いつもなら、映画など見て過ごすのだが、今回は隣の席のカイトと、おしゃべりをしながら、機内サービスの夕食を待った。

 カイトは、小学校に入る前に通う、幼稚園のようなスクールに通っているらしい。

 日本に住む、祖父母の家に遊びに行った帰りとの事。

 ジョンも日本への出張も兼ねての旅行らしい。

 なぜ、ママは一緒じゃないのか? 
 少し気になったが、そういう事もあるだろうと、あえて聞かずにおしゃべりを楽しんだ。


 こんなに素敵ででたよりがいのありそうな男性が旦那様なら、奥様も幸せだろう? 

 しかも、普段は、ファーストクラスに乗るんだから、経済的にも余裕があるのだろう…… 

 つい、そんな事を考えてしまった。


 機内サービスが運ばれてくる。

 私は機内食をけっこう楽しみにしている。

 ファーストクラスに乗る予定だったジョンにしてみれば、エコノミーの食事は合わないのでは? 

 とチラッとジョンの方を見ると、しっかりと平らげていた。


 なんだか、胸の奥でほっと暖かいい気持ちになったのが分かった。


 ジョンが機嫌が悪くならない事にほっとしたのだろうか? 

 自分でも、よく分からなかった。


 カイトも、お子様メニューを満足そうに食べている。


「リサ。これ取って」


 カイトが、デザートのゼリーの蓋が取れないようで、私に差し出してきた。


「いいわよ」

 私がゼリーを受け取ると……


「カイト、お姉さんになんでも頼んじゃだめだろ?」


 ジョンは少し困ったように言った。


「おねえさんじゃなくて、リサだよ」

 カイトは、反省の顔など見せず、逆に少し怒ったように、ジョンに言った。


「すみません……」

 ジョンが頭を下げて私を見た。


「いいえ、私も楽しんでいますから、気になさらないで下さい」

 私は、カイトの食べ終わった食器を軽くまとめた。



 食事が終わると、日本時間の十時をとっくに回っている。

 さすがにカイトも、あくびを始めた。