予定より早く成田空港に着くと、チェックインをすませ、早々に出国手続きをすませた。

 出発ゲートに向かいながら、免税店やショップを覗きながた進む。

 それも、この旅の楽しみの一つだ。

  
 飲み物でも買って一息着こうと、コーヒーショップ方へ向きを変えた途端、ふとももの辺りに「ドサッ」と何かがぶつかった衝撃に足を止めた。


 慌てて目線を下に向けると、小さな男の子が尻もちをついてこちらを見ていた。

 慌てて、しゃがみこむと男の肩に手をまわし立たせた。


「大丈夫? 痛いところない?」

 私は、声をかけるが、緊張しているのか、男の子はクビだけを動かし肯いた。


 
 「カイト! だから、走るなって言っただろう!」

 声を上げながら、こちらへ男性が走って近づいて来る姿が目に入った。


 息を切らせて、近づいてくる男性は、オーストラリア人のようで、背が高く、短目の金髪に、青い瞳。

 だが、綺麗な日本語で、眉間に皺をよせ男の子を睨んでいた。


「ごめんなさい……」


 小さい声で言う男の子に向かって……


「謝るのはパパにじゃない、お姉さんにだろぅ?」

 ちらりと、こちらを見た彼の瞳は、真っ直ぐで力強い印象だった……


「ごめんなさい」

 男の子は、今度は大きな声で私に向かって謝った。


「いいのよ。それより怪我しなかった?」

 私は男の子の手を取った。


「本当に、申し訳ありません。あなたの方こそ、お怪我はありませんか?」

 彼は申し訳なさそうに眉を潜めた。


「私は、大丈夫です。気になさらないで下さい」

 私は、両手を横に小さく振って少し笑みを見せた。


「それなら良かった」


 彼はほっとしたように、男の子の手を取った。


 父親に手を引かれて歩く男の子が、くるりとこちらへ振り向いた。


 私は、ニコリと手を振ると、男の子もニコリと手を振りかえした。


 そして、手を繋いでいた彼も、クルリと振り向き私の顔を見ると、ニコリとして手を振った。


 さすが、オージー。



 なんだか、これからの旅に益々ワクワクして胸が弾んだ。