「その常連さんさぁ、沙夜華のこと狙ってんじゃないの?」


由紀乃がボブの髪をフワッと揺らしながらニヤリと笑う。


「…………えぇ!?」


「だってさ、いっつも同じ時間に来るんでしょ?
それって沙夜華が必ずいるからじゃない!?」


「………ないないないない!」


「えーそうかなー?
てか沙夜華の好きなタイプってなに?」


「ちょっ、由紀乃急にどうしたの!」


「いや、聞いたことなかったなーって」


「……別に、特にないかな。好きな人もいたことないし」


「えー!恋しようよ!恋はそれだけで世界がガラッと変わるんだから!!」


由紀乃の目がキラキラ輝いている…。眩しい。


でも、本当に恋はしたことがない。


「…強いて言うなら……」


「ん?なに?」


「いや、なんでもない。」


強いて言うなら、好きなタイプは、父親に似てない人。


…なんて、ね。