「お、お待たせしました…」

私はお酒ともつ鍋を持って、彼が座っている、カウンター席の端へと向かった。

彼はいつもあの席に座る。

カウンターはいつもそんなに混まないのだから、真ん中に座ればいいのに。

そんなことを思いながら、彼の前にお酒ともつ鍋を置いた。

彼は無言で手を合わせ、お酒を飲み始めた。

こわいけど、ちゃんと礼儀のある人だな…。



彼はいつも、お酒を飲み、店長の料理を食べ終わってから厨房に行き、店長と少し話してから代金を払って帰る。

店長とどんな会話をしているのか気になるけど、
プライバシーなので立ち聞きはしない。
かなーり、気になるけど。


彼が帰れば、私もそろそろ上がりの時間だ。

はぁ。今日も無事終わった。あの常連さんに怒られたりしなくてよかった。
まあ怒られたことはないんだけど。

毎週来てくれるけどいつでも彼に怯えてしまうし、
なんだか本当に申し訳ない。

でもなぁ。あの人は近寄りがたいオーラが半端じゃないよ。



でも…

この居酒屋は、金曜日はかなり混むが、週明けの月曜日はお客さんはまばらだ。

そんな月曜日にあの人は来るもんだから、気にならないと言えば嘘になる。


なぜ彼は毎週月曜日に、同じ時間に来て、同じ席で、同じお酒を頼み、同じ時間に帰っていくのだろう。


一度店長に聞いたことがあった。


でも店長は、「特別な常連さんだよ」といって微笑むだけだった。