後ろから僕を呼ぶ声が聞こえます。
でも、もしかしたら大変な事になってるかも知れない。
「香久山」
泳いで泳いで、浮き輪の近くに着いた頃。
香久山が海中に居ました。
手を、海面に伸ばして。
逝ってしまう。
香久山の笑顔が、見れなくなってしまう。
会話も出来なければ、笑い合う事も出来なくなってしまう。
僕は急いで香久山を抱いて、海面に上がりました。
「ハァ、ハァ、ハァ」
すると、
香久山「ゴホッ、ゴホゴホッ」
と、水を必死に出す香久山。
良かった。
優side end
あれ?
目を開けると、そこは水面。
え?
私、足がつって、ずっと沈んでたよね?
と、
心地好い香り。
嗅ぎ覚えのある、私の大好きな人の香り。
「優」
優を見ると、泣いていた。
優「良かったです。ホント」
そう言い、私を抱き締める優。
「ありがと。優が助けてくれたんだね」
優「声が」
ん?
優「僕の名を呼ぶ声が聞こえました。だから、来れました」
「そっか」
私の声が、届いたのかな?
そう思いながら、私は優に浮き輪を被せられ、
一緒に岸の方へ。
すると、
皆に迎えられた。
そして、「今日は不吉過ぎるね」という王子の言葉で、
私達は帰る事となった。
で、私と優以外は先に車に乗り、
私と優は、百合と夏目を呼びに行った。
コンコン
シーン
「開けて良いかな?」
優「良いんじゃないですか?」
と言うわけで、
ガチャ
部屋に入り、ベットを見ると、抱き合って寝る百合と夏目が。
優「僕達も帰ったらやります?」
と、後ろから抱き締められて、恥ずかしかったけれど、
「うん」
と、優の手を握った。
優「ま、まぁその前に、2人を運びましょうか」
「ふふふ、そうだね」
優の出だしの声が詰まったのに、少しうけてしまった。
で、2人を運べたんだけど、
私、優「「離れない(ですね)」」
2人は、抱き着いたままお互いを離さない。
けど、無理やり離すのも可哀想なので、
そのまま車まで運んだ。
そして、車に乗り皆で帰った。
全員を車で送り、
組に帰って分かったのだけれど、
どうやら2人は本格的に風邪の様で、熱を出していた。
で、
組員が2人の部屋に布団を敷いてくれたんだけど、
2人はやっぱり離れなくて、
百合の部屋に、夏目の布団も敷いて貰った。
「早く元気になってね」
優「そうですよ」
そう言い、私達は部屋を出た。
百合side
目が覚めると、そこには私の自室の天井。
それから、夏目の体温。
あ、そうだった!!!!
わ、私、夏目と抱き合ったまま寝たんだった!!!!!
てことは、運んだ人に見られたって事だよね?
ヤ、ヤバイよ!!!!!
スッゴい恥ずかしいんだけど。
……………でも、やっぱり夏目に風邪、移したんだよね。
「ゴメンね、夏目」
と、もう一度抱き締める。
すると、
夏目「百合」
と、私を呼ぶ声が。
「な、夏目!?」
夏目「スー、スー」
な、何だ寝言。
スリスリ
と、私の首元にスリスリしてる。
可愛い。
そう思い、夏目の頭を撫で様としたら、
夏目「ん~、ん?」
と、夏目が起きた。
ヤ、ヤバッ!!
と思った時私は、何となく寝た振り。
夏目「百合」
「……………」
夏目「寝てる」
と言って、ホッとしてると、
夏目に抱き締められた。
夏目「ユ、リ」
と言って、また寝てしまった。
まったく。
可愛いのに、たまに強引で、
でもスゴく優しくて。
今までの、無口で静かなイメージしかなかった夏目。
でもあの時、今は居ない唯斗に向かって、
『好きな女1人守れないし、百合の後ろで戦ってるし、ダサい事ぐらい分かってる』
と言ってくれた事。
今考えると、とても嬉しい。
私は、こんな恥ずかしい事を、私の望んだ事をサッと言ってしまう君に、
どうしようもなく恋い焦がれているんだね。
「夏目、私の愛しい人」
そう言って、私は夏目に軽い口付けをして、眠った。
百合side end
夏目side
目が覚めると同時に、百合が目を閉じたのが見えた。
「百合」
百合「……………」
「寝てる」
けど、起きてるんだよね。
分かってるけど、百合が寝た振りをしたいなら良っか。
そう思い、俺は百合を抱き締めて、
「ユ、リ」
そう言って、同じ様に寝た振りをした。
すると、
百合「夏目、私の愛しい人」
そう言って、百合の唇が俺の唇に軽く当たってキスをした。