「冷えピタ、ありますか。」


「あんまり、俺に近づかないで。」


「え…」


「ああ、ごめん…なんもない、寝る」



苦しそうに咳をして、

柏木先輩はそっぽを向いた。


やっぱり、前のこと怒ってるよね…。


どこを探しても、冷えピタがないので、

自分のハンカチを、

冷たい水でぬらして、しぼった。



近づかないで、って言われたけど。


ぜぇぜぇと、苦しそうに息をする、

柏木先輩をほっとくわけにはいかなかった。


冷たいタオルをおでこにのせると、

きゅ、と顔を歪ませる。


「あの、この前のことほんとにすみませんでした。…私、は、何であんなこといったのか…ムキになっちゃって」


うっすらと、潤った目でこっちをみる柏木先輩。


不覚にもドキリ、として。


甘いマスクが、


優しく微笑んだ。



「琴羽ちゃんが言ったことは間違ってない。俺はタラシで最低でクソなんだ」

はは、と自傷気味に笑う柏木先輩。



「さ、最低じゃないです、クソじゃないです。優しくて、女の人の心がよく、わかって……またわかったようなこと言うなって言われるかもしれない、けど、柏木先輩は素敵な人です」


もう、何言われてもいい。


ちゃんと、ありのままで。




グイっ


「ひゃ…っ」


腕を引かれ、

柔らかな毛布の感触。


ソファーが、がた、と揺れ、


甘い香水の匂い。



「か、柏木先輩…?」


「ぎゅってしてもい?…ちょっとだけだから」


「え…?」


動揺した私。


潤んだ瞳で強く私を見つめる柏木先輩。



遠くの方で、

とっ、とっ、とっ。

階段を上がる足音が聞こえて。



バッ と、私は柏木先輩から離れた。


きっと、ヨウくんだ。