「そういえば、さ、ことの好きな人…ってだれ?」

唐突な質問にすこしだけ、あせる。


「え、っと、…」

言ってもいいんだろうか。

ほんとうのことを。


「あー…ごめん!言いたくなかったらいい!…うん、やっぱ言わないで。」

ヨウくんはすこし、難しい顔をしてた。


「はい…、」

「ごめんね、なんか無理矢理みたいになって」

「いえ!大丈夫です!」

お礼を言って、顔を上げた時。





「琴羽。」


「え────。」


顔を上げると、

ヨウくんの目線は私の後ろにそそがれていた。

「ヨウくん、?」


くるっとふりかえると。


「え、大樹…?」

大樹がいた。


どき、

真面目なその顔に心臓が高鳴る。


「琴羽、ノート返しに、きた。」

大樹は、真顔で私にノートをてわたす。


「わ、わざわざ来てくれたの?…ありがとう」

大樹は、私をじっと見ていた。


どきん、どきん。


「…っ。あ、えっと、私先輩と話あるから、またね!」

苦しい空気に耐えられなくなった私はヨウくんの腕をむりやりひっぱって、

にげた。


そう、大樹の視線から逃げた。


なんであんな顔、するの?

なんで、なんで。


資料室に来た私たち。

ヨウくんのそでを掴んでることに気づいて、

あわてて手を離す。


「あっ!すみません!」

「ううん…。」

「ヨウくん…?どうし─────」


すっ。

ヨウくんの冷たい手が私の頬に伸びる。


どきんっ


「よ、ヨウく…なんです、か…」

「顔、真っ赤だ。…そんなんじゃ彼に好きって、バレるよ?」

え。

もしかして、ばれて……!?

大樹がすきってこと。


「な、なんで、」

「ふふ、なんもないよ。…戻らないと、ね」