「そっかあ、ようがねえ……、待ってて!呼んでくる!」

春姫先輩は微笑むとそのまま、軽い足取りで教室のほうへもどっていた。

なんで驚いてたんだろ…。

そうこうしてるうちに、

すぐにようくんがでてくる。


「どーした?」

「これ、お礼に…チョココルネです」

スっとさしだすと、

ようくんの瞳はキラキラとひかりだす。


「うそ!俺さ、今日昼飯なくて、お腹すいてたんだ~。こと、ありがとう。」

えっ。

なに、それ。

「こと、ですか…?」

「うん、俺なりにあだ名考えてみた!どう?」


"こと"

そう呼ばれるのははじめてで、

なんだかくすぐったい気持ち。


「いいですね、ふふっ」

「わざわざ来てくれてありがとね。」

ようくんは大きな手を私にのばすと、

セミロングの髪をわしゃわしゃした。


「やめてくださいよっ、もう~!」

優しくておとなでかっこよくて、

でも少し子供っぽくて、甘党で。


ああ、こんな人が王子様っていうんだろうなあ。

そう、思った。