「みんな、席につけー
あぁ、授業始める前に一つ大事な話がある。
入っていいぞ」

「あっ!」


今朝会った人だったんだ。
同じ制服着てたのに気づかない私って…。
そんなことを考えていると、彼の凛とした声が教室に響いた。

シンドウコハク
「初めまして。神堂琥珀です。よろしく」ニコッ


教室中から黄色い歓声が上がった。
そりゃそうだよね、あんな整った顔めったに見れないし。


「神堂は月下の隣でいーな?」


えっ、ええええ!
わ、私の隣に神堂くんが来ちゃうの?!


「月下、神堂の学校案内とか頼んだからな。」

「はぃ…。」


もちろん、クラス中は大ブーイング。
そうなりますよね(笑)


「よろしくね。月下さん」

「よ、よろしく」


私の隣にイケメンが居るだなんて夢みたい。
この時私はこれから何が起きるか知らないまま、呑気に浮かれていたのだ。




昼休みになり、黒川くんとご飯を食べていると、

「ねえ、俺も一緒に食べていいかな?」

「もちろんだよ!いいよね?黒川くん」

「好きにすれば」

「ありがと。」


黒川くん、いつもと雰囲気違うような。
それに物凄く神堂くんを睨んでいるような。


「ん?俺の顔に何かついてる?」

「なんでここに来たんだ。」

「え?知り合いなの?」

「ただの腐れ縁だ。」

「お前が不真面目だから俺が連れ戻しに来た
んだろ。それに咲羅は俺のものだ。」


っ?!
な、なんだそれは!
私は告白した覚えもないしされた覚えもないし、それに婚約者とかもいないし。
えっと…えっーと。


「お前、まだそんなこと言ってるのか?
自分の言ってる意味が分かってるのか?」

「少なくとも黒よりかは理解してるよ。
だからこそ俺は咲羅を選んだんだ。」

「あ、あの!ちょっと待ってよ。
話についていけないって言うか、その意味
が分かんないって言うか…。」

「ごめんね。混乱しちゃったよね。
よかったら色々お話したいから放課後俺の
家に来れる?」

「俺も行く。」

「う、うん。行くよ。」


話ってなんだろう。
それに私が神堂くんの物ってなにー?!
全然理解が出来ないまま昼休みは終わってしまった。
said.琥珀



はぁ~。
いつになればこの争いは終わるのやら。
そー考えならがら外を眺めていると、襖が勢いよく開いた。


「琥珀様~!早く婚約者を決めて貰わないと困
りまする。お父上からも言われておりまする
故!」

「分かってるよばあや。心配かけるね」


最近父上は、交戦争いで俺の跡取りがほしいそうだ。
俺が居なくなれば神堂家を継ぐ人が居なくなるんだって。
かと言って跡取りがいない今、俺を最前線に立たせたくないみたいだ。



俺の家は1000年以上も続く家系で、全ての神々を束ねる白狐の一族。
中でも母上は白狐の長であり、他の神々からも慕われていて、強く美しい方だった。
俺はそんな母上に憧れていた。


だが、母上の事をよく思っていない一族がいた。
奴らは母上が1番信頼を置いていた一族だった。
俺も小さい頃からよくお世話になった人だった。
とても優しく俺に色んな事を教えてくれた。
狩りの仕方、女の口説き方、それに変幻の仕方。とても優しく強い人だった。







なのに、なのになんで…
なんでなんだよっ











母上はあいつに殺された…












ぜんぶ、全部、俺のせいだ。








said.咲羅



話ってなんだろう。
結局、神堂くんは俺の家に来てって言って先に帰っちゃうし。
それに私、神堂くんのお家知らないじゃん!


黒「よし、じゃー行くか。」

月「へ?どこに?」

黒「どこに?じゃねーよ。
アイツの家に行くんじゃねーのかよ。」

月「行くって言っても家の場所が分かんないし
。」

黒「だから案内してやるって言ってるんだろ」

月「家知ってるの?!」

黒「まあな。」


それきり黒川くんは神堂くんの家に着くまで何も話さなかった。
でも、どうして黒川くんはあんな寂しそうな顔したんだろう。



そうこうしている内にでかいお屋敷の前で黒川くんは止まった。


「ここだ。」

「えっ?!こんなにおっきいの?」


日本建築なのは分かるけど、それにしても大きすぎる!
門から玄関まで距離が結構ある。


「じょ、冗談だよね?」

「なんで冗談言わなきゃならねーんだよ。」

「ですよね…」


唖然としている私を置いてズカズカ中に入っていく黒川くん。


「まってよ!勝手にはいっていいの?! 」

「まあ、大丈夫だろ。」


不安に思いながらも黒川くんの後ろをついて行く。
玄関を入って正面に綺麗な女の人の写真が飾ってあった。


「わぁ!綺麗なひとだなあ。」

「月下、置いてくぞ。」

「あぁ!ごめん、待ってよ。」


それにしてもあの女の人どっかで見たような気がする。


「あの~!すいません。勝手に入られては困り
まする。」

「あっ!えっと、すいません。あの、私たち
…。」

「黒川涼だ。白に用がある。」

「黒様でございましたか。大変失礼致しました
。少し見ない間に大変ご立派になられて。
お茶をお持ち致しますのでどうぞごゆっくり
。」


そう言うと家の使いの人は部屋の奥へ入っていった。


「黒様って黒川くんのこと?」

「まあな。ついたぞ、ここがあいつの部屋」


と言いながら襖を開けた。


「お、お邪魔します。」



ん?誰かいる。
窓際の机に突っ伏して寝ている。
よく見てみると神堂くんだ!
寝てる時の顔も物凄くかっこいい。私が見とれていると、


「月下、見とれてないでちょっと下がってろ
。」

「…っ!み、見とれてないよ?何するの?」

「いいから下がってろ。」

「う、うん。分かったよ。」


私は神堂くんから離れた。
黒川くんは私が神堂くんから離れるのを見ると、勢いよくスマホを神堂くんめがけて投げつけた。


あぶないっ!
反射的に私は目を閉じた。


パシッ!


私が想像していた鈍い音はせず、何かを受け取める音がした。

恐る恐る目を開けると、神堂くんがスマホを握りしめていた。
笑顔で黒川くんを見つめていたが、目が笑っていない。
その笑顔が怖いです…


「やあ、来たんだね。来て早々の挨拶がこれ?」

「俺の前で寝てる奴が悪いんだろ。」


とりあえず当たらなくてよかった。


「咲羅、来てくれてありがと。
あ、それと俺のことは神堂くんじゃなくて
琥珀って呼んで?」


ええーっ?!
いきなり呼び捨てですか?!


「咲羅に琥珀って呼んでほしい。」


そんな子犬のような目で見られたらやばいですよ。
反則だよ。


「で、でも。いきなりは失礼だよ。」

「俺がいいって言うからいいの!
ね?お願いっ」

「う、うん。こ、琥珀くん…」


彼は嬉しそうに私の頭を撫でた。
私の思考はついていけずパニック状態。


「白、そんなことしてないで話とはなんだ」


あ、そういえば黒川くんは琥珀くんのこと白って呼ぶけど何でだろう?


「それも今から話すよ。あと、咲羅の心の声
全部聞こえてる」クスッ

「え、嘘!でも私何も喋ってないよ?
なんで分かるの?」

「それも含め咲羅には話さないといけないこ
とがあるから。少しずつ理解してほしい。
今から話すことは全て本当だからね」


襖が開き家の使いの人がお茶を持ってきてくれた。




運ばれてきたお茶を啜りながら、琥珀くんが話し出すのを待った。









そして彼は、静かに話し出した。




時は遡り、今から1000年前。


小さな森に美しい白い狐の神が住んでいた。
チョウラン
狐の名は蝶蘭と言い森の動物たちからも慕われていた。







ある日、人間たちがやってきた。
人間たちは入ってくるなり銃を構え、動物たちを狩り始めた。
とても悲惨だった。




said.蝶蘭


「止めぬか、!」


妾は人間に喰いかかった。


「このっ、狐!」


バン!


痛い。
心が引き裂かれるように痛い。
あの子たちを守れなかった。


「よくも、よくもっ!妾の大事な子たちを」




バンバンバン!




ここで倒れるわけにも行かぬ。
最後の気力で鬼火を打った。


「うわああああっ!」


人間たちは森から逃げていった。


残ったのは燃えている森。
妾の愛した森…


あぁ、森が燃えていく。
みんな、死んでしまった。


すまぬ、妾が守れなかったから。
妾は守ると誓ったのに…


涙が止まらなかった。




悔しい。





妾は無力だ。





そのまま意識を手放した。