あの夢は一体なんだったんだろ。
それにしても綺麗な人だったなぁ。
「よっ!」
「っ!…おはよ。朝からびっくりさせないでよ」
クロカワリョウ
この人は同級生の黒川涼くん。
同じクラスになってからなぜかいつも一緒にいるんだよね。
「そんなのんびり歩いてていいのかよ。
もうそろそろチャイム鳴っちゃいますよ?」
「あっ!!ほんとだっ」
「走るぞ。」
「走るぞはいいけど、私足遅いの知ってるよね?」
「知ってるけど?なにか?
…はぁ~。」
え?なんでため息なのー?!
眉間にシワ寄ってるし、何か考えてくれてるのかも。
「……。」
ん?嫌な予感が…
「ニヤリ、俺先に行ってるわ!
また学校でな月下!!」
と言い彼は走り去ってしまった。
……ん~。
はっ!
学校に遅れるじゃん!
「待ってよー!」
はぁはぁはぁ。
もー限界…。
体力がないことが今になって嫌になる。
そこの角を曲がれば近道♪
どんっ!
「いたたたたっ…」
「すいません。お怪我はありませんか?」
「わ、私の方こそ前を見てなかったので、
すいません!はい、大丈夫です。」
「そう。ならよかったです。」ニコッ
すごく顔の整った綺麗な人。
見とれていたら、
「あの~、俺の顔に何かついていますか?」
「あ、いえ!すいませんっ
綺麗なのでつい見とれちゃい…」
い、いけない男の人に綺麗って失礼だよね。
「すいません!」
クスクス
「面白い方ですね。また機会があったらお会
いしましょう。」
そう言って彼は立ち去っていった。
あ、名前聞き忘れちゃった。
それにしてもあの制服どこかで見たような…
結局、遅刻になっちゃった。
途中で色々あったからなあ。
迷子の子のお母さん探したり、おばあさんの荷物持ったり、他にも色々。
でも、いい事したのは気持ちがいいし、今日の遅刻はよしとしようっ!
「お前何ブツブツ言ってんだ?」
「黒川くん!いつから居たの?」
「最初から。
それにしても来るの遅すぎ。」
「誰かさんが置いて行ったからだよっ」
「すまんすまん。そんな怒んなって。
あ、そだ。今日、転校生が来るってよ。」
この時期に転校生だなんて珍しいなあ。
「みんな、席につけー
あぁ、授業始める前に一つ大事な話がある。
入っていいぞ」
「あっ!」
今朝会った人だったんだ。
同じ制服着てたのに気づかない私って…。
そんなことを考えていると、彼の凛とした声が教室に響いた。
シンドウコハク
「初めまして。神堂琥珀です。よろしく」ニコッ
教室中から黄色い歓声が上がった。
そりゃそうだよね、あんな整った顔めったに見れないし。
「神堂は月下の隣でいーな?」
えっ、ええええ!
わ、私の隣に神堂くんが来ちゃうの?!
「月下、神堂の学校案内とか頼んだからな。」
「はぃ…。」
もちろん、クラス中は大ブーイング。
そうなりますよね(笑)
「よろしくね。月下さん」
「よ、よろしく」
私の隣にイケメンが居るだなんて夢みたい。
この時私はこれから何が起きるか知らないまま、呑気に浮かれていたのだ。
昼休みになり、黒川くんとご飯を食べていると、
「ねえ、俺も一緒に食べていいかな?」
「もちろんだよ!いいよね?黒川くん」
「好きにすれば」
「ありがと。」
黒川くん、いつもと雰囲気違うような。
それに物凄く神堂くんを睨んでいるような。
「ん?俺の顔に何かついてる?」
「なんでここに来たんだ。」
「え?知り合いなの?」
「ただの腐れ縁だ。」
「お前が不真面目だから俺が連れ戻しに来た
んだろ。それに咲羅は俺のものだ。」
っ?!
な、なんだそれは!
私は告白した覚えもないしされた覚えもないし、それに婚約者とかもいないし。
えっと…えっーと。
「お前、まだそんなこと言ってるのか?
自分の言ってる意味が分かってるのか?」
「少なくとも黒よりかは理解してるよ。
だからこそ俺は咲羅を選んだんだ。」
「あ、あの!ちょっと待ってよ。
話についていけないって言うか、その意味
が分かんないって言うか…。」
「ごめんね。混乱しちゃったよね。
よかったら色々お話したいから放課後俺の
家に来れる?」
「俺も行く。」
「う、うん。行くよ。」
話ってなんだろう。
それに私が神堂くんの物ってなにー?!
全然理解が出来ないまま昼休みは終わってしまった。
said.琥珀
はぁ~。
いつになればこの争いは終わるのやら。
そー考えならがら外を眺めていると、襖が勢いよく開いた。
「琥珀様~!早く婚約者を決めて貰わないと困
りまする。お父上からも言われておりまする
故!」
「分かってるよばあや。心配かけるね」
最近父上は、交戦争いで俺の跡取りがほしいそうだ。
俺が居なくなれば神堂家を継ぐ人が居なくなるんだって。
かと言って跡取りがいない今、俺を最前線に立たせたくないみたいだ。
俺の家は1000年以上も続く家系で、全ての神々を束ねる白狐の一族。
中でも母上は白狐の長であり、他の神々からも慕われていて、強く美しい方だった。
俺はそんな母上に憧れていた。
だが、母上の事をよく思っていない一族がいた。
奴らは母上が1番信頼を置いていた一族だった。
俺も小さい頃からよくお世話になった人だった。
とても優しく俺に色んな事を教えてくれた。
狩りの仕方、女の口説き方、それに変幻の仕方。とても優しく強い人だった。
なのに、なのになんで…
なんでなんだよっ
母上はあいつに殺された…
ぜんぶ、全部、俺のせいだ。
said.咲羅
話ってなんだろう。
結局、神堂くんは俺の家に来てって言って先に帰っちゃうし。
それに私、神堂くんのお家知らないじゃん!
黒「よし、じゃー行くか。」
月「へ?どこに?」
黒「どこに?じゃねーよ。
アイツの家に行くんじゃねーのかよ。」
月「行くって言っても家の場所が分かんないし
。」
黒「だから案内してやるって言ってるんだろ」
月「家知ってるの?!」
黒「まあな。」
それきり黒川くんは神堂くんの家に着くまで何も話さなかった。
でも、どうして黒川くんはあんな寂しそうな顔したんだろう。
そうこうしている内にでかいお屋敷の前で黒川くんは止まった。
「ここだ。」
「えっ?!こんなにおっきいの?」
日本建築なのは分かるけど、それにしても大きすぎる!
門から玄関まで距離が結構ある。
「じょ、冗談だよね?」
「なんで冗談言わなきゃならねーんだよ。」
「ですよね…」
唖然としている私を置いてズカズカ中に入っていく黒川くん。
「まってよ!勝手にはいっていいの?! 」
「まあ、大丈夫だろ。」
不安に思いながらも黒川くんの後ろをついて行く。
玄関を入って正面に綺麗な女の人の写真が飾ってあった。
「わぁ!綺麗なひとだなあ。」
「月下、置いてくぞ。」
「あぁ!ごめん、待ってよ。」
それにしてもあの女の人どっかで見たような気がする。
「あの~!すいません。勝手に入られては困り
まする。」
「あっ!えっと、すいません。あの、私たち
…。」
「黒川涼だ。白に用がある。」
「黒様でございましたか。大変失礼致しました
。少し見ない間に大変ご立派になられて。
お茶をお持ち致しますのでどうぞごゆっくり
。」
そう言うと家の使いの人は部屋の奥へ入っていった。
「黒様って黒川くんのこと?」
「まあな。ついたぞ、ここがあいつの部屋」
と言いながら襖を開けた。
「お、お邪魔します。」