白井さんは、ようやく私から視線を外した。

時計を見ると、もう22時半を少し回っている。

「あ、そろそろ帰らないと。」

白井さんは前髪をかき上げながら、長いため息をついた。

「やっぱり時間が気になるんですね。」

私から視線を外したまま、寂しそうに笑うとゆっくりと立ち上がった。

私は何も言わず、白井さんの後ろをついて行った。

だって、しょうがないよね。

この日から、白井さんと私は、手をつないだまま渦巻くブラックホールに吸い込まれていくような、そんな苦しい時間を共に過ごすことになっていく・・・。

2人だけの秘密なんて、作っちゃいけなかった。

例え、どんなことがあっても。