淡い期待がいきなり現実になることに一瞬目の前がくらっとなる。

でもすぐに自分の気持ちを立て直した。

「あ、はい。構いませんが。」

できるだけ冷静を装う。

「じゃ、12時に1階のロビーで。」

白井さんは、それだけ言うと静かに電話を切った。

別にどうってことないんだけど…

そうなんだけど…

私の心臓は電話を取ったときの倍くらいの速さで脈打っていた。

フロアの時計を見ると、11時40分。

残りの20分はほとんどトイレで過ごした。

特に若返るわけでもないのに、鏡の前で口紅を入念に塗り直したり。

そんな自分が滑稽でもあり、当然のことをしているような気もしたりした。