次の日、会社に行くと、社内の人事異動の文書が回覧されてきた。

文書を見て、鼓動が止る。

『白井太一 依願退職』

え?白井さん、どうして?

自分の座席で文書に釘付けになっていると、お茶室で女性社員達がひそひそと立ち話しているのが耳に入ってきた。

「白井さん、辞めちゃったのねぇ。」

「そうそう、この会社の社長令嬢と結婚したんだけど、最近離婚話が持ち上がってて、責任とって辞めたとかって、誰かが話してた。」

「あとさ、これも本当かどうかわからないんだけど、白井さん不倫してたんだって。」

「うそー。そうなんだ!そりゃやばいよねぇ。誰と?もしかして社内とか?」

「それがさー、社内の人らしいわよ。」

「そうなんだー。白井さんって素敵だから、私も密かにあこがれてたのにな。ショック!」

文書を持ってる手のひらが汗ばんできた。

軽いめまいを覚えて、文書を隣の座席に回すとため息をついて両手で顔を覆った。